症例報告:白石 大輝(鍼灸師)2020.4
jitsurei 30代前半・女性・第2子不妊
子宮内膜が薄い状態が続いたが、鍼灸三焦調整法を始めて1ヶ月半で子宮内膜が厚くなった!


>>不妊治療状況と来店動機

2018年9月から第2子希望。2019年1月に着床するも化学流産した。2019年7月に子宮鏡検査を行いポリープや慢性子宮内膜炎が見つかり、抗生物質にて治療を行い、一ヶ月ほどで完治した。
以前は検査ごとに内膜の厚さが10mmは確認できていたが、子宮鏡検査後から内膜が6~7mm以上にならず、以前と比べて内膜が薄い状態が続いた。現在、低温期にレトロゾールを服用しながらタイミング法を行っている。
子宮筋腫が1つある。甲状腺機能低下症のため、チラージン服用。妊活の期間が長くなっていることや内膜が薄い状態が続くことに不安を覚え来院。

生理状況

初潮10歳、生理周期28~29日、生理は若干少ない、生理の色は淡く塊が少しある。
質は粘稠で生理痛あり、腰部と下腹部が重い痛み、鎮痛剤服用。
イライラ、不安感、腰痛、食欲不振、疲労感などの月経前症状(PMS)がある。

パートナーの状況(男性不妊)漢方・鍼灸の有無

男性不妊なし。


>>婦人科以外の随伴症状・病歴

疲れやすい、冷え性、肩こり、背部痛、腰痛、立ちくらみ、めまい、皮膚瘙痒症、平熱が低い(35.8)、易感冒、低血圧、イライラ、不安感、胃腸障害(胃もたれ、食欲不振)。

生活歴

仕事はデスクワークを行っている。ほぼ1日PCを使用。
プライベート面においてのストレスが強い。


>>中医弁証と鍼灸三焦調整法所見

・脈診 細弱(尺脈弱)
・舌診 舌淡、薄白苔、裂紋あり、舌下静脈怒張なし
・腹診 臍下不仁、胸脇苦満、心下痞
・弁証:気血両虚、胞宮血虚血瘀、肝鬱気滞、腎虚
・治療原則:益気養血、養血活血、疏肝理気、補腎填精

元々胃腸が弱く、脾の運化機能の失調により、気血両虚の状態となり、疲労しやすい、風邪を引きやすいなど全身に気血が行き届きにくい体質であったと考えられる。それに加え、日々のストレスやデスクワークにより交感神経の過緊張があり、上焦部の気血鬱滞が起こり、肝鬱気滞を引き起こした。気血両虚の体質のため、上焦に気血が鬱滞することにより、相対的に下焦は気血不足の状態となり、上実下虚の状態が慢性的に続いていたと考えられる。下焦の気血不足が慢性的に続いたことにより、腎や胞宮(子宮)が栄養されず、血虚が起こり、血虚により瘀血を形成。潤沢な血液が供給されない状態であるがゆえに、子宮内の血流循環の停滞及び免疫力の低下が起こり、子宮筋腫や子宮内膜炎が起きたと考えられる。それに加え、子宮鏡検査により子宮や子宮内膜に負荷がかかり(外傷による気滞血瘀を形成)、上記の状態を助長し、子宮内膜が薄い状態が続いたと考えられる。

上焦所見と経過

・百会に熱感と圧痛あり
・首肩、上背部の凝りや痛みあり
・両肩甲骨間の厥陰兪・心兪に硬結あり。
・みぞおち下部の心下痞が硬く実している。
・三焦調整をすることで首肩と上背部の凝りや痛みの程度が減少、めまいや立ちくらみはほぼ消失した。


中焦所見と経過

・胃腸虚弱による胃もたれ、食欲不振がある。
腹診所見における胸脇苦満や心下痞、腹皮拘急、左大巨の圧痛がある。
・背部の膈兪・肝兪の硬結があり、脾兪は陥凹して虚している。
・三焦調整をすることで胃腸症状はほぼ消失し、腹部の硬さが緩んだ。


下焦所見と経過

・脈診所見における尺脈弱。
・腹診所見における臍下不仁、大巨の圧痛あり。
・腰部の腎兪が陥凹し虚している。仙骨の八髎穴に圧痛がある。
・腰痛があり、低体温。
・三焦調整をすることで八髎穴の圧痛、腰痛はほぼ消失。臍下不仁、大巨の圧痛は減弱し平均体温が上昇。


鍼灸三焦調整法の治療方針

・脾胃虚弱体質から気血不足状態が起きていることから、下肢や背部の胃腸の兪穴を用いて健脾和胃を行い、気血の生成を促す(体性内臓反射により胃腸の蠕動運動を活性化させる)。
・上焦部の気血の鬱滞、下焦の気血不足を解消するため、頭部や頸部・下腹部や骨盤、下肢に鍼と灸、陰部神経に通電施術を行い、清上焦・補下焦を行う(椎骨動脈や脳底動脈から卵巣動脈や子宮動脈の血流を促進し、下垂体-子宮の性腺軸を安定させ、骨盤内の血流量を確保する)。
・胞宮の血瘀を散らし、新たな潤沢な血液が行き届くよう下腹部や仙骨部には中国鍼を用いて活血化瘀を行う(骨盤内、子宮を神経や筋肉を介して刺激し、血流を促進し、検査による損傷を回復させる)。
・日々のストレスによる肝気鬱結が見られ、それによる気滞も起きているので、耳灸や背部・上下肢のツボを用いて疏肝理気を行う(ストレスによる交感神経の過緊張を緩め、副交感神経を優位に働かせ、血流を促進する)。また、自律神経の中枢である視床下部の働きを促進し、女性ホルモンの正常な分泌を促す。
・健脾和胃、補腎の兪穴を用いることにより服用している漢方薬の効果が最大限発揮できるようにする(漢方薬の消化吸収を促し、目的の内臓に届かせる)。



>>結果・総論

通院ペース:2週間に1回
通院期間:3ヶ月

三焦調整法を行ってから1ヶ月半で内膜が9.8mm、その次の月経では8.9mmと以前よりも+2mm内膜が厚くなった。
三焦調整法により、交感神経の過緊張が緩和し、視床下部-下垂体の機能が促進されFSHの分泌の安定、さらに骨盤内血流を中心とする性腺軸に関わる血流が促進され、卵胞の発育やE2の分泌、各受容体の感受性が以前よりも安定。また、潤沢な血液が子宮に供給されたことにより検査による損傷が回復し、本来の受容体の感受性が発揮された結果、子宮内膜が厚くなったと考えられる
通常、子宮内膜の肥厚には脳下垂体からFSHが分泌され、それが血流によって運ばれ、卵胞の顆粒膜細胞の受容体が感受して卵胞が育ち、その卵胞から分泌されるE2を子宮の受容体が感受する、という工程が必要である。子宮内膜を厚くするにおいては、①FSHの分泌②ホルモン運搬のための血流③FSHに対しての卵胞の感受性④十分なE2が分泌できる程の卵胞の発育⑤卵胞のE2の分泌⑤子宮のE2に対しての感受性、と様々な複雑な要因が必要である。上記5つの要素はもちろん、子宮鏡検査後に内膜が育たなくなったことから、検査により子宮内膜が傷つけられ、特にE2に対しての感受性が落ちてしまったことが考えられる。
赤血球は120日周期で作り変えられるため、血流に関しては4ヶ月以内である程度の結果を見込めると思われるが、卵胞の質は180日~必要であるため、引き続き自然妊娠を目指し治療中である。



>>漢方服用の有無

誠心堂薬局にて漢方薬を服用。