坐骨神経痛

下肢神経痛の主なものは「坐骨神経痛」です。下半身の痛みとともに、腰や臀部(お尻)の痛みを伴うことが多くあります。鍼灸治療では「経絡」という特有の理論に基づき治療していきます。





坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛とは、坐骨神経の支配領域に生じる放散痛のことです。つまり、臀部(お尻)から下半身の後面、あるいは外側面に走る痛みやシビレ感のことで、足先まで放散することもあります。代表的な疾患には、腰椎椎間板ヘルニア、梨状筋症候群、腰部脊柱管狭窄症などがあります。


椎間板ヘルニア
神経根の圧迫や、加齢に伴う腰椎周辺組織の変性により、椎間関節や脊柱管が障害されて神経症状が現れます。
梨状筋症候群
骨盤の出口のところで坐骨神経が何らかの理由で硬くなった梨状筋の圧迫を受け、お尻や下半身に痛みが出ます。
脊柱管狭窄症
腰部では下位腰椎(L4/L5)が障害されやすく、馬尾神経を圧迫することもあります。その場合は、膀胱直腸障害(尿意切迫感)や性機能不全(異常勃起)、下肢の異常感覚(しびれなど)がみられ、早めの病院受診が必要です。
重症でない限りはそれぞれ保存療法が第一選択です。



中医学で考える坐骨神経痛

坐骨神経痛の原因の多くは「腰」にあります。中医学では、腰は「腎の府」といい、腰部は五臓の内の一つである「腎」に栄養されています。腎は生命維持に関わる成長・発育・生殖や骨を主りますが、加齢により腎の働きが衰えてくると「腎虚」という状態になり、腰を栄養することができず腰痛が現れます。中高年に起こる骨や周辺組織の変性は、中医学では腎虚という病態に当たります。腎虚は冷えタイプの「腎陽虚」と、のぼせタイプの「腎陰虚」に分類されます。腎虚は加齢だけでなく過労や長時間の立ち仕事などでも引き起こされ、また腰が栄養されないと外邪(風寒湿邪など自然環境の変化)の侵入や停滞を容易にします。




坐骨神経痛の鍼灸治療

鍼灸治療では、痛みは「不通則痛(気血通じざれば、すなわち痛む)」など血行不良による循環の悪いケースと、「不栄則痛(栄えざれば、すなわち痛む)」など栄養状態が悪いため起きる痛みに分かれます。




「経絡」とは、五臓六腑と皮膚表面をつなぎ、途切れることなく全身に張り巡らされているネットワークです。経絡の中に気血が流れており、全身(五臓六腑や運動器官など)を栄養しています。主に外邪(風寒湿邪などの自然環境の変化)や瘀血などの原因により経絡の流れが滞り栄養が行き届かなくなると、その経絡上に痛みや感覚異常が現れるようになります。
痛みの治療では、痛みが出ている部位を確認し、通じなくなっている経絡を確認します。坐骨神経痛は一般的に、背中から背面を走行する「足太陽膀胱経」、外側を走行する「足少陽胆経」に異常が生じます。「足の太陽膀胱経」の特徴は、外邪の侵入を最も受けやすく、例えば、風邪の引き始めに背中がゾクゾクするのは、足の太陽膀胱経に侵入したことを意味します。経絡の走行としては、腰部から臀部(お尻)、下半身の後面を下降するため、腰痛・坐骨神経痛の原因になります。「足の少陽胆経」は、足の太陽膀胱経に次いで外邪が侵入しやすいです。



▲足の太陽膀胱経

坐骨神経痛で使う代表的なツボ
足太陽膀胱経型:腎兪(じんゆ)、秩辺(ちっぺん)、委中(いちゅう)、崑崙(こんろん)など
足少陽胆経型:環跳(かんちょう)、風市(ふうし)、陽陵泉(ようりょうせん)、足臨泣(あしりんきゅう)など



 ※暮らしのアドバイス

洋服や下着はゆったりしたものを着て、締め付けないようにしましょう
長時間の座りっぱなしを避けましょう
ウォーキングをして血行を改善しましょう
冷え性の人は、温かい飲食や入浴を心がけましょう
ストレスをうまく発散しましょう