不眠症

成人の3割以上が何らかの不眠症状を抱えていると言われています。体を休めたいときに「眠れない」のは肉体的にも精神的にも辛いことです。ここでは、睡眠障害の中でも悩みの多い「不眠障害(不眠症)」について考えます。





不眠症とは?

夜間の不眠症状(入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒)に加え、日中症状がみられ、少なくとも週に3日以上、3ヶ月以上続く場合に(慢性)不眠障害と診断されます。日中症状とは、疲労倦怠感、注意力の低下、記憶力の低下、気分がすぐれない、イライラする、日中の眠気、ミスや事故を起こしやすくなった等、日中のQOL(生活の質)の低下を指します。仕事や人間関係のストレスで眠れなくなっても、一時的であれば治療の対象にはなりません。次第に「眠れない」こと自体がストレスになり、布団をみると無意識に緊張したり、「今夜も眠れなかったらどうしよう…」と不眠に対する不安が生じたりすると、慢性化しやすくなります。 不眠障害は、ストレスなどの心理的原因以外に、身体的原因(痛み、痒み、頻尿、呼吸障害等)、生理的原因(不規則な生活習慣)、精神的原因(うつ病、統合失調症、アルコール依存症等))、薬物的原因(薬の副作用、お酒、カフェイン、喫煙)でも起こります。不眠の原因が明らかな場合は、その治療を進めます。治療は生活習慣指導や薬物療法、場合によっては認知行動療法が行われます。



中医学で考える不眠症

睡眠は、五臓の一つである「心(しん)」の状態が反映すると考えます。「心は神(しん)を蔵す」と言い、「神」とは、精神・意識・思惟活動を指します。心が十分に養われ、心の働きが順調であれば、精神活動は安定します。そのため、心を養う気や血が不足したり、陰陽バランスが崩れたりすると、不眠症状がみられ「心神不寧(心神が落ち着かない・安らかでない)」の状態になります。




不眠症の鍼灸治療

鍼灸治療においては、まず心中から起こり心系(※1)に属す「手の少陰心経」と、胸中から起こり心包(※2)に属す「手の厥陰心包経」を使い、経絡を通じて五臓六腑(この場合は心と心包)の変調を調整していきます。また、ツボの中には不眠や精神安定に作用するものがあります。それらのツボは、経験上、皮膚の異常感覚や痛み、コリ、硬結などとして発生しやすい部位でもあり、経絡や臓腑の考え方とともに用いると相乗効果が期待できます。 不眠症状を訴える方の多くは、頭痛や肩・背部のこりを伴うため、肩こりの治療として鍼灸治療を試されるのもおすすめです。
(※1) 心系とは、心臓や大動脈などを指す。
(※2) 心包とは、心を包んでいる組織器官のこと。外衛として心を保護している。

不眠症で使う代表的なツボ:神門(しんもん)、内関(ないかん)、百会(ひゃくえ)、安眠(あんみん)、失眠(しつみん)、健脳(けんのう)など。

タイプ別鍼灸治療

心脾両虚(しんぴりょうきょ)
思い悩む性格や、元々胃腸が弱いタイプ。
随伴症状:入眠困難、多夢、眩暈、動悸、健忘、食欲不振、下痢 など。
おすすめのツボ:心兪(しんゆ)、足三里(あしさんり)三陰交(さんいんこう)など。

胆気虚(たんききょ)
心配性で、普段から物事に感情的で過度に反応するタイプ。
随伴症状:寝ても少しの刺激で目が覚める、悪夢を見る、驚きやすい、決断力の低下、眩暈、動悸 など。
おすすめのツボ:心兪(しんゆ)、胆兪(たんゆ)、丘墟(きゅうきょ)など。

肝鬱化火(かんうつかか)
強いストレスや長期にわたるストレスによって、自律神経が失調したタイプ。
随伴症状:多夢、ひどいと一晩中眠れない、怒りやすい、イライラする、ため息、口が苦い、目の充血 など。
おすすめのツボ:内関(ないかん)太衝(たいしょう)風池(ふうち)など。

痰熱内憂(たんねつないゆう)
甘いものや、味の濃いもの、アルコールなどの暴飲暴食や消化機能が低下しているタイプ。
随伴症状は:睡眠不安、胃や心窩部のつかえ、痰が多い、頭重、眩暈、ゲップ など。
おすすめのツボ:中脘(ちゅうかん)、豊隆(ほうりゅう)内庭(ないてい)など。

心腎不交(しんじんふこう)
加齢によるものや心労、過労があるタイプ。
随伴症状:入眠困難、多夢、動悸、眩暈、耳鳴、健忘、腰がだるい、五心煩熱、咽喉の渇きなど。
おすすめのツボ:太渓(たいけい)太衝(たいしょう)湧泉(ゆうせん)など。



 ※暮らしのアドバイス

概日リズムを整えましょう
概日リズムは、朝にリセットされます。リセットするためには太陽の光を浴びることと朝食をとることが必要です。
定期的に運動をしましょう
眠るためには、身体が適度に疲れていることが必要です。日中の有酸素運動は睡眠の質を高めます。
アルコールやカフェイン、喫煙を控えましょう
これらの習慣は、寝つきの妨げや睡眠の質を低下させます。夕方以降はカフェイン摂取しないなど、生活習慣を見直しましょう。